温泉のある町の円卓 平成20年5月開催記録
御結び
温かい温泉を掘り当てた町が、この先このままでいいものか?国からのふるさと創生資金と銘打って、全国の市町村に一億円をばら撒いた、時の総理大臣も今は過去の人となった。町民の保養施設にと掘った温泉はいつのまにか観光施設に姿を代えて人集めにてんやわんやか。
湯結び
七百五十メーターの掘削で水脈を確認できたものの、さらに千五百メートルまで掘削を続けて断念。予定外に少ない最初の水脈から染み出る温泉水を汲み溜める方法を選択したのです。当時の町民人口は一万人余ですから温泉施設を作っても何とか運用できると言う試算だったのですが
御結び
そうは行かなくなった。当初の町民福祉サービスの一環として、ふるさと創生資金を活かすなら十分なはずだったのが
湯結び
別の補助金事業が軒を並べて進行しだすと、予想もつかない数の入湯客が押し寄せるようになった。それ自体は別の意味では有り難い事だったのですが。施設の規模がそれに合わなくなって、お湯の量が足りなくなった。加えて冷泉の為に湯沸しのガス代や浄化装置のメンテンスなども大きな負担となってしまったのです。
御結び
それで現在の会計はどのように管理しているのかな。
湯結び
最高責任者でもある町長の発言は黒字で堅実な状態と言うことなのですが、現状はそうとは言い切れないことが発生しつつあります。
御結び
それを具体的に出してみようか。
湯結び
まず利用客の高齢化と減少による入湯料の下落傾向がはっきりと数字に出てきています。次に湯量減少は勿論ですが、その掘削坑と汲み上げ設備の老朽化によるメンテナンス費用が心配です。
町結び
行政事務方側から言いますと、温泉には入湯税というものが付加されておりまして、本来なら一般税収扱いが筋なのです。しかし結果としてほぼ同額の予算が温泉会計に還元されてしまっているのが現状です。それにもう一点心配されているメンテナンスに関しては、今後確かに増加の一途を辿る事は間違いありません。それを補うための減価償却に関する会計処理が為されていれば良いのですが。
御結び
大切なことですね。そのほかにも問題点はないのかな。
町結び
現場サイドにはいろいろ細かいことがあるようですが・・・。入湯税に関しては還元されているのは事実ですし、減価償却に関する会計処理の確認はそれほど難しいものではありません。しかしこの二つを無視しての温泉黒字説には疑問が残りますね。
湯結び
利用客数にも該当するところがあります。
御結び
利用客数とは当然入湯料を支払う人数と言うことですか
湯結び
はい、現在の料金体系は一般は五百円、老人(六十五歳以上)と子供(十二歳以下)は三百五十円の設定です。しかし、このことが特に問題ではなく、老人の利用比率が高いと言うことが利用料の伸びない一因になっています。
町結び
ああ、いやあ。高齢者がどうとかと言う話ではなくて、折角整備した周辺の施設の有効利用も含めて若い世代を集客することも必要かと。
御結び
いろいろ大変なことが多いですね。現状に見合った少し先のことを考えたほうが良いのではありませんか。
湯結び
公営の施設だからこそ正規の決算で評価し公開されるシステムがいいと考えます。そして健全な経営で施設の独立採算制を高めなくてはならない。
町結び
しかしそうなると、現段階では相当の赤字になり税金の投入によって温泉が存続していることが明らかになる。
御結び
粉飾に近いことをいつまでも続けているよりは、改善点を早く見つけ出し対策を講じることが望ましいのではないかな。
町結び
お湯の量、入湯客数、設備の老朽化どれをとっても不安材料が多いので、場合によっては撤退も視野に入れなくては。
湯結び
それもいいですが、マイナス思考ばかりではなく現状から無駄を省いて赤字対策を模索することも必要だと思います。
町結び
そう言われてもなかなかね。
御結び
どうですか、先ほど出た不安材料をもう一度分析してみるというのは。
町結び
いきなり独立採算で言われても現場を指揮している者にしてみたら、何処から取り掛かれば良いか・・・。
御結び
独立というからには何の援助も無く黒字経営にというのは建前ですが、ここまでにしたのは補助事業として立ち上げ、それに甘えた町側にも責任の一端はあるんだから。
湯結び
そう、そうですよね。折角料金の取れるお客さんなのに、町から発行された無料の招待券で堂々と利用していく方の多いこと。私は現場で色々な場面に遭遇していますが、そのチケットを売りさばいている人が現れたときはさすがに落胆しました。本来の住民福祉の目的とは何なんだと考えてしまいます。
町結び
温泉担当と言う部署ではなかなか物が言い難いが、独立ということになれば、町にチケットを買い上げてもらってもいい訳だ。
御結び
そういう事のひとつひとつが積み重なって経営状態を不安定にしているのだから、覚悟を決めて事に当たってみてはどうかな。いま官公庁で盛んに言われている「コストカットの意識」で状況を分析して独立採算を目標に町と渡りあって見れば何かが見えてくるんじゃないですか。
町結び
そのコストカットから言えばどうしようもないことですが、冷泉であるがために避けられないガス料金が大きいですね。使わずにはいられないんですが、もっと納入単価を交渉するとか出来そうですよね。
御結び
そのことについては、私から提案しておきましょう。湯沸しを必要としない方法はあるんです。
湯結び
えっ、そんなことができるのですか。まさか温泉に当たるまで掘削し直すなんてことじゃないですよね。
町結び
そんなことするくらいなら止めてしまったほうが楽ですよ。
御結び
まあまあ。そんな小さな話ではなくてね、いま環境衛生の広域事業が市町村合併のあおりで分立、合併と激しく動いてますよね。
町結び
ええ、それがなにか?
御結び
合併は別にして環境衛生組合だけを町に引き戻すんですよ。
町結び
それは出来ないこともないですね。流れはその方向らしいですから。でもそれが温泉とどう関係するんですか。
御結び
引き戻すとなると町単独の焼却炉が必要になってくる。それを温泉の奥に建設しその焼却熱で温泉を沸かすのです。
湯結び
なるほどね、それは良く聞く話だから出来ないことはないですね
町結び
ちょっと待ってください、そうなると温泉の前の道路を塵収拾車がひっきりなしに通るわけでしょう。それは周辺の住民からの非難を受けるだろうし、とても賛同は得られない。
御結び
そうでしょうか、ひっきり無しといわれますが、人口一万五千人の町から出る塵の量は台数にしてどれほどか試算してみては如何ですか。それと通行する道路周辺の住民の方や温泉の利用客の監視を受けることになれば、それこそいい加減な仕事は出来なくなりますよ。
町結び
それで納得していただけるでしょうか。
御結び
いいですか。大切なのはアイデアを出し合って納得のいく結論を出すように努力することです。例えば周辺住民の温泉利用の無料化や、住民の皆さんの協力で成り立っているアピールボードの設置とかね。担当部署だけでなくて、町のみんなが協力し合えばもっと沢山のいい提案が出るでしょうから。ここから先はあなた方の腕の見せ所ですよ。
町結び
町のみんな、そうですよね。みんなの町のことだからそれで良いんですよね。
御結び
そうですよ。心の底からお願いすればきっといい方向が見えてくる。閉館する、しないはそれからでも全然遅くないのではありませんか。