夕張の円卓 平成12年5月開催記録
御結び
寒い所の寒い話をしなくてはならなくなった。北海道の夕張という町が遂に財政再建団体になってしまったようですね。
町結び
はい、この手の話は誰もが頷けるそれなりの理由が必ず存在します。しかし冷静に判断していれば回避できることが多いのですが。
御結び
ほう、なかなかそうは行かないということか。
町結び
町を預かる政治家は簡単に私利私欲の落とし穴に落ちます。補助金と自分の名誉に誘惑されて市民の未来を犠牲にするのです。
御結び
結果として現在の惨状が全国に知られて、町を捨てて逃げ出す者まで現れた。その中に責任の一端を担うべき立場の者までいるとは。
町結び
何の手段ももたない多くの社会弱者が、疲弊しきった町に取り残されました。
御結び
若い世代も、皆無ということではないと思うが彼らはどうしている。
町結び
一番の現状理解者は彼らかも知れませんね。夕張の現象を直視し、それを打開しようと活動を始めていますが、力の足りない彼らに何が出来るのか。現実を知るに連れ、ここに自分達の未来を預ける不安が先に立ってくると言います。
御結び
全国からのエールは久しぶりに日本人らしさを感じたね。夕張は絶対に再興しなければならない
町結び
はい。
御結び
市民の全てが無責任に再建団体までの道に追いやったのではないのだから、本当に町の未来を愛する人達の為に残さなくては
町結び
それが出来れば私としても夕張に、そして全国にある同じ状況の町に勇気が与えられます。
御結び
それぞれのケースによるが、この町が元気になることが先決になる。そのために辛い決断も必要になることが起きるだろう。国結び入ってくれ。
町結び
えっ!国結び?
御結び
国結びと聞いただけで驚かなくても良いよ。今回はより良い再建を進めるために力を借りるということだ。
町結び
それは夕張にとって諸手を挙げていいことですか
御結び
それは受容れる側が、提示される再建案の価値観を共有できるかで変わってくる。
国結び
私もお声がかかったときは戸惑いましたが、今度は力になれるかもと言うことで期待しています
町結び
かなり具体的なお話のようですね。
御結び
だろうね。このまま何十年も財政再建を続けるのか、それとも未来の礎としての道を選択するかということだ。
町結び
そうでしょうね。それで
御結び
夕張に核廃棄物の最終処分場を建設することだが。
町結び
ええっ、あの六ヶ所村で原燃が保管している核廃棄物のことですか。
御結び
「このまま疲弊した市民の生活が何十年と続くよりは」と言う話ではなく、もっと前向きな話という事で考えているのだが
町結び
核廃棄物の最終処分場に前向きも何もないのではないですか
国結び
言われる通りです。が、国としても原子力発電を続ける限り絶対に避けられない課題なのです。そして今の夕張市は前向きに検討できる町のひとつだと考えています。
町結び
どうして夕張だけが?
御結び
石炭景気に沸いた時の夕張がもう一度ということは、残念ながら無いだろう。エネルギーの主役を石油に譲った今、よほどのことが無い限りは。
町結び
そうですね。それで前向きと言われるのは?
御結び
残ってしまった負の財産の活用。もちろん借金の活用は無理だが。
町結び
それ意外に何が残っていますか。私の町ではありませんが、それなりに試行錯誤はしたつもりです。残っているのは石炭を掘ったボタ山と、その穴ぼこぐらいのものですよ。あとは法外なメンテナンスが掛かる国の補助金で建てた箱ものなら腐るほどありますよ。よくここまでやったものだと感心してしまいますよ。
御結び
まあまあ、そう熱くならないで
国結び
どうもすみません。私にも無関係の話ではないので、ここからは私も加わらせてください。
町結び
別にあなたを責めるつもりではないのですが、夕張のことになるとつい力が入ってしまいます。どうぞ参加してください。
国結び
有難う御座います。前向きな話ということで聞いていただければ良いかと思うのですが。現在までに国の補助金事業に賛同して手を挙げてくれた自治体の惨状はご存知の通りです。そして誘致が成功しなかったことも。
町結び
過去のことはもういいですから続けてください。
国結び
では、前向きの二つの条件ですが、一つは言うまでもなく財政再建団体からの脱却、二つ目は負の財産でもあるその穴ぼこです。
町結び
穴ぼこ?私の言う穴ぼこは廃鉱となった穴ぼこ、それに今となってはいつ落盤が起きるか判らない坑道のことですよ。
国結び
はい、そうです。勿論それを使用するということではなく、地質の調査用坑道として利用すれば何億という経費の削減が可能です。
町結び
そういう使い方は思いもつかなかった。そりゃあ、確かに地下何百メーターに網の目の様に掘られてはいますが。
国結び
当然夕張にはそれに見合っただけの還元が為されると言う訳です。
町結び
ちょっと待ってください。それでは結局、落ち込んだ夕張を又補助金でと言う風に聞こえますが
御結び
確かにここまでなら、私もそう思っていたがその先がある。
国結び
原子力発電所の建設計画が推進困難なことを考えると、時限のある計画でもあるし、もう一度原点に返って総合的に質の高いものを模索する中で策定されたものなのですが。この最終処分場を世界でも最高の水準とし、安心と安全の技術を確立させるために大学を設立し技術者の要請を諮りたいのです。
町結び
大学ですか?
国結び
そうです。世界中からの学生を受け容れ、世界一安全な核廃棄物処分場の中心でその知識と技術を学ぶのです。夕張は処分場の町であると同時に、世界中の核に関する専門技術者を目指す学生達で溢れる町になるでしょう。それに伴う研究機関や電力会社の関連施設も必要になってくる。
御結び
ここまで前向きな計画はないと思うよ。しかも夢があるのがいい。破格で売り払われた炭鉱は管理の行き届かない産業廃棄物処分に使われていることを考えると。
町結び
最も気がかりなことの説明を聞かなければ夕張市民に説明が出来ないことがあります。
国結び
最終処分施設の安全性を保つための技術レベルではありませんか
町結び
そうです。世界のレベルがどうなのか。地下埋設による環境への影響と未来の予測などの、情報開示が確実に為されるのかと言う事です。
御結び
情報の開示は一番気になったから確認しておいた。計画の始まりから中心になるスタッフを、地元中心に採用し先進国に留学させ、彼らを情報開示の窓口にするそうだ。
国結び
国も原燃も情報の開示制限が、どういう事態を引き起こすかはこれまでの経過から十分理解しています。これが最期の機会と捉えて前向きに考えて行きますのでご理解いただきたいのです。
町結び
そうですか。ここだけではなく原子力発電所を抱えた地域には共通の問題があるわけで、その辺が一番憂慮するところです。
御結び
最終処分場に関しては、夕張に対しての提案だから北海道庁、近隣市町村ともしっかり未来を見据えて検討すると言うことで結んでおこうか。